かつて家の出入り口をクグリといった

 門のわきにある小さな戸口を、共通語で“くぐり”といいます。ところが、農村地域では、家の出入り口(玄関)を、一般にクグリといっていました。ほかにヘーリックチ・ヒャーリックチなどともいいました。ヘーリックチとかヒャーリックチは、「入(はい)り口」の変化語です。クグリは、身をかがめくぐって出入りする“小さな入り口” をいいます。クグリの高さは1メー トル50センチ、横幅は1メートルほどで、このクグリは大戸に付いています。
 クグリには引き戸が付いているので、いつでも開閉し、出入できるようになっています。大戸は、屋内にある馬屋から馬を引き出したり、引き入れたりするときに使用しました。
 「クグリは、セメー(狭い)から身をかがめてヒャーンネ(入らない)と、頭をぶっつけてイタクスッカン(けがをするから)ね」
 昭和30年代になると、多くの農家で家を改修し、あるいは建て替えるようになりました。昔からのなじみのクグリは、かげも形もなくなってしまいました。クグリということばもなくなり、死語となってしまいました。
 ヒャーリックチ・クグリ以外に、トブグチとかトボグチという古い方言もあります。これらの方言は、戸袋口が変化したもので、もとは引き戸をしまう所を備えた入り口という意味でした。上記の方言は、いずれも物の形や構造や大きさなどと、深くかかわり合っていることがわかりますね。

(市民記者 森下 喜一)

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更新日:2019年12月02日