田植え女は水澄ましのように動き回った

田植えの季節になると、田んぼに水澄まし(昆虫)がやってきて、素早い動作で水面をくるくると旋回(せんかい)します。一休みしてはまた同じ動作を繰り返します。このようすを見て、カサグルマ(風車)と呼ぶようになりました。また、いつも水面に浮いていることからウキムシ(浮虫)とも呼ぶようになりました。

最も多く使われていた水澄ましの方言に、トトメ(トトノメ)とソートメムシがあります。幼児の遊びに、「かいぐり、かいぐり、とっとのめ」があることはよく知られています。左右の手を胸のあたりでくるくる回し、右の人差し指で左の手のひらの中央をつきながらいう遊びです。この遊びの動作と、水面をくるくる回る水澄ましの動きがよく似ていることから、田沼地域では水澄ましをトトメまたはトトノメというようになりました。

ところで、昔は田植え女を早乙女(さおとめ)といい、それが訛(なま)ってソートメともいいました。かつて田主の家族の若い娘(早乙女)には、苗代(なわしろ)の苗を取って、それを植え付けるまでの仕事が割り当てられていました。苗を植えることは早乙女の努(つと)でした。菅笠(すげがさ)をかぶり、白い手拭を腰にさげ、襷(たすき)をかけて田んぼの中を歩き回りました。どの田んぼも、早乙女で賑(にぎ)わっていました。この早乙女の動く姿は、水澄ましのようだと思ったのでしょう。佐野地域、田沼地域、葛生地域では、水澄ましをソートメムシと呼んでいました。

(市民記者 森下 喜一)

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更新日:2023年09月21日