苗木が成長することをノダツといった

夏になると、田んぼの畦道(あぜみち)や川岸に生えている雑草はめきめき成長していきます。それを放っておくと、繁茂(はんも)して稲穂の成長の妨(さまた)げになるので、農家の人は一年間に何回も草刈りをします。小さな草木が伸びて大きくなることをホキルといい、この方言は佐野全域で通用します。

「雨が降ると草がホキルもんだから、また刈ンナクッチャ」

ホキルは「ほふきでる(穂吹出)」が変化したものといわれています。昔は、表面に高く出てくるものを「穂(ほ)」といいました。最近、草刈りをしない若者が増えてきて、それに比例するかのように、ホキルを知らない若者も増えてきた、と中高年の人たちはいいます。佐野には、ホキルとまったく同じ意味の方言にノダツもありました。

「一週間も経たないうちに、土手の草があんなにノダッチャッテ…」

ノダツは、「のびたつ(伸びたつ)」が変化したものです。この方言は佐野・田沼・葛生の地域に昔からあって、明治生まれの人たちは、ホキル以外にノダツともいっていました。ところが、ノダツよりも後から伝播(でんぱ)したホキルが、だんだん勢(いきお)いを増し、ノダツを追いやってしまいました。勢力をなくしたノダツは死後同然となり、今ではノダツを口にする古老もいませんし、それを知る人さえも数少なくなってしまいました。

(市民記者 森下 喜一)

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更新日:2023年09月21日