「疣(いぼ)何個?」がひきがえるの方言になった

ひきがえるは体が大きく、背中には大小のいぼ(疣)状の突起がたくさんあるので、イボガエルなどともいいます。動作がのろいうえに不気味な感じがして、嫌われがちですが、多くの子どもたちは、普通の蛙とちがって動かずにでんと構えているその不思議なようすに、興味をもっていました。佐野では、このひきがえるを、ナンコンボ・エボナンコ・ナンコーボ(ー)・ナンコボ・ナンコゲーロ(ル)などといっています。「ナンコンボの背中を棒で突っついたら、怒っていぼの穴から白っぽい乳のような液(えき)を出したよ」といって騒ぎ立てたものです。

昔の子どもたちは、大きなひきがえるの背中にあるいぼを見て、そのいぼがどれほどあるのか、なぜあるのかに関心をもっていました。「何個のいぼがあるか?」が「何個のいぼ?」になり、これが訛(なま)って、ナンコンボ・ナンコボ・ナンコーボというようになりました。これらの方言を略してナンコともいいます。エボナンコも同様に、「いぼ何個?」が変化したものといわれています。佐野とその周辺の地域では、ナンコゲーロともいいます。これも何個(いぼの数)の意のナンコと、「かえる(蛙)」が訛ったゲーロ、この二つの語が結び付いたものです。

かつて佐野の子どもたちは、ひきがえるの大きさや動作についてはいうまでもなく、いぼがたくさんあることの不思議さに着目していたことがわかりますね。

(市民記者・森下 喜一)

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更新日:2023年09月21日