敬語の'ガンス'はすっかり消えてしまったー敬語その1ー
栃木弁は敬語がないとか、'無敬語地帯'であるなどといわれてきました。佐野弁も同じです。敬語を用いないと、ぞんざいであらあらしい感じさえします。では、なぜ佐野弁には敬語が発達しなかったのでしょうか。そこで佐野の歴史をさかのぼってみましょう。かつて佐野の住民の多くは田畑を耕しながら生計を立てていました。藩政によるきびしい圧政もなかったし、身分や地位による威圧もなかったことから、さして敬語を用いる必要はなかったのでしょう。
でも、敬語がないわけではありません。その当時の敬語とその意味・用法などについて述べてみましょう。
明治の人たちがよく使っていた方言にノマッセ(飲んでください)、ミセベケ(見せましょう)があります。この'セ'と'ケ'は、いずれもていねいな意を表す敬語です。
この他に、最近まで使われていた敬語に、ていねいな意を表す'ガンス'があります。明治や大正生まれの人たちは、よくあいさつことばに使っていました。朝には「オハヨガンス(おはようございます)」、日中の暑いときには「アツーガンスねぇ」、夕方には「オバンデガンス(ヤンス)」といい、祝い事には「オメデトガンス」などといいました。
'ガンス'には、~です、~ます、~ございますのように、ていねいな意味があります。ガンスは江戸時代の「ござんす」が変化したものです。昭和になっても使っていましたが、終戦後には徐々に衰えはじめ、ガンスに代わってデス・マス・ゴザイマスが使われるようになりました。
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更新日:2022年11月30日