かつて広く使われていたていねいなことば 'ヤンス' ー敬語その2ー
ていねいな意を表す方言に”ヤンス”があります。”ヤンス”は”ガンス”と同様に共通語の「です」や「ます」に相当する助動詞です。明治・大正生まれの人たちは、昭和20年ごろまでヤンスを使っていました。目上の人や見知らぬ人などと対話するときには、特にていねいな意味のヤンスとガンスを使っていました。次は、いろいろな場面で使われるヤンスの用法を挙げてみました。
”何歳になったか”をていねいにたずねるときは「見たところお若く見えヤンスけど、お歳はなんぼになりヤンシタ?」といいます。”来る”をていねいにいうときは「友だちと一緒に来ヤンスベー」といいます。”帰った”をていねいにいうときは、「ハー、ケーリヤンシタゼー」といいます。
ヤンスは、行く・見るなどという動詞と、静か・立派などという形容動詞のあとにつけますが、前回述べたガンスは、よい・ありがたいなど形容詞のあとにつけます。このようにヤンスとガンスの意味は同じであっても、その用法にははっきりした違いがあります。ところで、ヤンスとガンスの使い分けがはっきりせず、混同する例もあります。
・「そうです」は普通「そうでヤンス」というが、そうでガンスということもあります。
・「お晩です」は、普通「お晩でヤンス」というが、お晩でガンスということもあります。
上方で使っていたヤンスは江戸に伝わり、その後佐野でも使うようになりました。
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更新日:2022年12月28日