顔などに現れるしみを/ジゴクホソビという
血気盛んな壮年期にはからだの表皮(肌)に張りがあり、つやがあってなめらかですが、老年期を迎える頃になると、肌にみずみずしさ、なめらかさがなくなります。人によっては、顔や手にほくろのような褐色のしみが現れます。このしみを、方言でジゴクボクロまたはジゴクホソビなどといいます。
しみの数は、年齢とともに増え、徐々に大きくなっていきます。見目もわるくいやな感じがします。特に女性にとって、しみは美肌の大敵で、まさしく地獄を感じさせるものです。色や形がほくろに似ていることから、ジゴクボクロというようになりました。
古くから使われてきた、もう一つの方言にジゴクホソビがあります。
「年取ると、顔にも手にも、アッチャコッチャ(あちこち)ジゴクホソビができチャッテさあ。黒っぽい色だンベー、ンだから汚げでねえ」
こぶ・いぼ・ほくろ・あざ・しみなど皮膚に生じるものを、昔はすべてひとまとめにして、一般に「ふすべ」といっていました。ふすべには、むだなもの、役に立たないものという意味があります。たしかにいぼやほくろなどは、なくてもいいものです。このふすべが変化して、ホソビとなりました。
ホソビの語頭にジゴクが結び付いて、しみの方言ジゴクホソビが生まれました。昭和二十四・五年頃まで使っていましたが、その多くは高齢者でした。今では知る人もほとんどなく死語同然となってしまいました。
(市民記者 森下 喜一)
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更新日:2019年12月02日